その建物*の生け垣は低くて、遠くに見える山々もまた、こじんまりとしていた。港より高い位置にあるけれど、傾斜はなだらか。海辺の町で想像するような、海が眼下に広がる感じでもないし、山を見上げる感じでもない。
視線は、ほとんど平らな方向に抜けて、やがて建物の屋根や電柱や木々や山など、どこかしらにぶつかる。少しだけ広い風景。少しだけ広い風景に対して、どうやって開口を構えて、内部をなじませていくか。
...といっても、もともとあった窓の大きさを変えるということではない。そうではなくて、たとえば内部の開口を塞いで視線を留め、窓のはたらきを変えている。それから、玄関の位置をずらすことや、細長い扉をつけることで、窓の意味合いを調整している。
窓だけでなく、その木造の柱や、造作の棚、かけられた絵画、についても同じようなことが言える。もともとあったもの、もともと描かれたものは変わらない。ただ、なにかしらの操作によって、意味を塗り重ねている。それで、外も中も、意識の及ぶところが少しだけ広い。それが、この町と、この家について感じたことだった。
*その建物: (I could see the) smallest things 設計: tandem + studio Yukasa Narisada